土砂災害危険度評価技術の開発、危険度予知、早期警戒システム構築


土砂災害研究グループ

(1) 本研究では、クロアチアでの使用に適した性能・容量を有し、かつ地すべり調査重点地域へ運搬できるポータブル型の実用的な非排水リングせん断試験機(地すべり再現試験機)を開発する。

(2) モデル地域を対象としてリングせん断試験機を用い土質試験を実施する。プレート地震、活断層地震が多発するクロアチアにおいては、豪雨に起因する地すべりと並んで、地震時に発生する地すべりの危険度判定・災害予測技術を開発する必要がある。また、リエカ市の中世の城など文化遺産地区における地すべり危険度評価手法の研究を実施する。土質試験はこれらの要請に適合した方法を用いる。

(3) ザグレブ市のコスタニエク地区並びにリエカ市周辺のグロホヴォ地区の大規模地すべりを対象として現地調査並びにモニタリングを実施し、早期警戒技術の開発のための基礎資料を得る。さらに、地すべり危険度軽減方法についてザグレブ市及びクロアチア地質調査所と共同研究を行う。また、泥岩-頁岩互層(フリッシュ)地帯等に多発する斜面崩壊・土石流の現地調査を実施し、洪水研究グループと合同でその早期警戒技術の開発を目指す。

(4) 総括合同研究グループと共同で、広域を対象とした危険度評価手法を開発する。クロアチアの自然条件に適合した地すべり危険度評価を実施するために、階層構造分析法(AnalyticalHierarchy Process法)の改良を行う。 また、モデル流域における適切な、危険度評価要因(地表傾斜、地質構造、河川との位置関係、地表変動の明瞭度等の要因)を抽出する。 広域調査対象地域に関しては、ALOS衛星画像(2.5m解像度モノクロ・ステレオペア画像)を用いた概略地形判読により第一段階の地すべり危険度評価を行うと共に、地すべりの分布状況を確認するための現地調査を行う。

(5) クロアチアに適した、実用型の安価な地すべり再現試験機を使用し、地すべり土の土質定数を的確に把握し、地すべりダイナミクスに基づく危険度評価法を確立し、モデル地域の地すべりに適用する。

(6) モデル地域に関しては、IKONOS衛星画像(1m解像度モノクロ・ステレオペア画像)あるいは大縮尺航空写真を用いた詳細地形判読により第二段階の地すべり危険度評価を行う。その際、詳細な現地調査により地すべりの現況を確認し、詳細地形判読に基づく危険度評価結果の妥当性を照合する。

(7) 現地調査並びにモニタリングによって得られた基礎資料に基づき、ザグレブ市のコスタニエク地区並びにリエカ市周辺のグロホヴォ地区の大規模地すべりを対象として、早期警戒システムを設置、運用する。その際、ザグレブ市及びクロアチア地質調査所と共同研究を行う。



2.山地型洪水・土石流シミュレーション手法の開発、早期警戒システム構築


水文・洪水災害研究グループ

(1) クロアチアにおける特徴的な洪水である山地型洪水(Flush Flood以下フラッシュフラッド)、特にカルスト地形におけるフラッシュフラッド発生機構の解明のため、フラッシュフラッドの発生地域の類型分類を行う。具体的には、過去に多数フラッシュフラッドが発生している山地渓谷を選定し、上流部/中流部/下流部における山地河川の河床材料と基底石灰岩を採取し、大まかな地下浸透水の割合を見積もる。対象流域がカルスト地形の場合は地中・地下空洞の洪水を考慮し、岩盤浸透モデルと山地河川にあわせた分布型流出モデルと組み合わせて洪水毎の予測流出量を見積もる。 モデル流域を以下の地域に設定することとする。ザグレブ市後背山地ではジルノメレツ小流域を対象とする。リエカ市周辺地域ではソルト・クリークを含むドォブラチナ流域を対象とするが、特にソルト・クリーク流域において土砂並びに洪水の流出全般に関わる詳細な解析を実施する。スプリット周辺地域ではスイトナ・カラカシカ流域を対象とする。

(2) 山地域における早期警戒システム構築のため、雨量計と現地で運用可能なレーダー雨量予報技術の適用を試みる。技術的に可能であれば現地機関との協力の上、降雨情報ネットワークとXバンドレーダーの適用による雨量計側を行い、対象流域における平野部での雨量と山岳部での降水量の雨量強度、空間分布及びハイエトグラフ(降雨の時間分布)の詳細な比較を行う。

(3) 山地河川における土砂生産と、フラッシュフラッドが発生した際に土石流が発生しているかについて、またどのような条件で発生するかについて調査を行う。同時に水理模型実験を通じてこれらの土石流の発生及び流動機構について実験解析を行い、適切な数値モデルの提案に繋げる。 分布型流出モデルおよび混相流モデルを融合し、洪水と土石流の発生を判別し、統合的に評価できる数値モデルを構築する。また同モデルを用いてフラッシュフラッドおよび土石流に対するハザードマップを作成する。

(4)上流部に設置した雨量計、X バンドレーダー雨量予測情報、あるいは上流部の流量ゲージと組み合わせた洪水の早期警戒システムを開発し、モデル地域に設置、運用する。


3.土砂・洪水災害統合ハザードマップの開発及び土地利用計画ガイドラインの策定


総括合同研究グループ

本グループは、土砂災害・洪水災害両研究グループの研究成果として得られた、危険度評価方法を適用し、土砂・洪水災害統合ハザードマップ作成手法を開発する。また、ザグレブ市後背山地並びにリエカ市周辺地域、さらにスプリット市周辺地域において、モデル地域を選定し統合ハザードマップを作成する。さらに、統合ハザードマップを活用し、土砂・洪水災害を軽減するための国土利用基本計画ガイドラインを策定する。具体的な手順は以下の通りである。

(1)総括準備:土砂・洪水災害の軽減に関わるクロアチアの社会条件に関する基礎調査を行い、その結果に基づき、本研究を展開するための対象地域を選定する。ザグレブ市後背山地並びにリエカ市周辺地域、さらにスプリット市周辺地域において1000km2規模の広域調査対象地域を選定し、さらに対象地域内に詳細検討のため数10 km2規模のモデル流域を抽出する。広域調査対象地域並びにモデル地域に関する数値地形図を整備する。 モデル流域を以下の地域に設定することとする。ザグレブ市後背山地ではジルノメレツ小流域を対象とする。リエカ市周辺地域ではレジナ川流域中のグロホヴォ地すべり周辺域並びにソルト・クリークを含むドォブラチナ流域を対象とするが、特にソルト・クリーク流域において土砂並びに洪水の流出全般に関わる詳細な解析を実施する。スプリット周辺地域ではオミッシュまでの沿岸斜面地域並びにブラチ島を対象とする。 土砂災害研究グループと合同で、広域調査対象地域に関しては、ALOS衛星画像(2.5m解像度モノクロ・ステレオペア画像)を用いた概略地形判読により第一段階の地すべり危険度評価を行うと共に、地すべりの分布状況を確認するための現地調査を行う。 また、モデル流域に関しては、IKONOS衛星画像(1m解像度モノクロ・ステレオペア画像)あるいは大縮尺航空写真を用いた詳細地形判読により第二段階の地すべり危険度評価を行うと共に、地すべりの現況を詳細に確認するための現地調査を行う。 危険度評価手法の開発:クロアチアの自然条件に適合した地すべり危険度評価を実施するために、階層構造分析法(Analytical Hierarchy Process法)の改良を行う。 また、モデル流域における適切な、危険度評価要因(地表傾斜、地質構造、河川との位置関係、地表変動の明瞭度等の要因)を抽出する。 上記の手法並びに要因を用いてモデル流域における地すべりの分類並びに危険度評価を行う。

(2) 統合ハザードマップ作成技術の開発:土砂災害研究グループが実施する地すべり再現試験結果に基づく、土砂災害危険度判定結果並びに災害範囲予測結果を適用すると共に、洪水災害研究グループが実施する、数値モデルを適用したフラッシュフラッドおよび土石流に対する危険度判定結果並びに災害範囲予測結果を適用し、両者を統合したハザードマップ作成技術を開発する。

(3) 土砂・洪水災害を軽減し持続可能な国土開発に貢献するための土地利用基本計画策定技術を開発する。 モデル流域を対象として制度の高い統合ハザードマップを作成する。 統合ハザードマップを活用し、土砂・洪水災害軽減のための土地利用基本計画ガイドラインを策定する。